2026年3月30日、南海電気鉄道から正式な発表がありました。
和歌山港と徳島港を結ぶ南海フェリーが、2028年3月末をもって廃止されます。
僕は2022年の秋、スーパーカブ110でこのフェリーに乗りました。和歌山港でバイクを積んで、2時間ちょっとの船旅。甲板に出て、遠ざかっていく和歌山の景色を眺めながら「これは本当にいい移動手段だな」と思ったのを覚えています。
あの時乗っていたのが「フェリーかつらぎ」という船でした。
その船が、というよりその航路そのものがなくなる。50年以上続いてきた海の道が終わりを迎えようとしています。
この記事では、南海フェリーがなぜ廃止になるのか、いつまで乗れるのか、廃止後バイク乗りにどんな影響があるのかを、実際に乗った経験をもとに整理します。
南海フェリーとはどんな航路だったか
和歌山〜徳島を結ぶ唯一の定期フェリー
南海フェリーは、和歌山市の和歌山港と徳島市の徳島港を結ぶ定期フェリーです。
距離にして約61km、所要時間は約2時間15分。1日8往復、終夜運航していました。就航率は99%以上と高く、台風の直撃がない限りほぼ欠航しない安定した航路でした。
和歌山側では南海電鉄の和歌山港駅と直結していて、大阪なんばからフェリー乗り場まで電車一本でアクセスできます。徳島側も徳島港から路線バスでJR徳島駅まで約25分。鉄道との連携が整った、使いやすい航路でした。
原付二種乗りにとって事実上の一択だった理由

バイク乗りにとって、この航路の価値は特別なものがありました。
大阪・奈良・和歌山方面から徳島の東海岸や室戸岬を目指すとき、南海フェリー以上に合理的なルートがなかったからです。
僕はカブ110、つまり排気量110ccの原付二種で乗りに行ったんですが、原付二種は高速道路に乗れません。明石海峡大橋は高速道路の一部なので、淡路島経由のルートは最初から使えない。しまなみ海道は原付でも渡れますが、大阪からだと距離がありすぎる。東予フェリーで高松や松山方面に渡るルートもありますが、徳島・室戸方面には遠回りです。
つまりカブ110で大阪から徳島を目指すなら、南海フェリーが事実上の一択でした。
和歌山港に着いてしまえば、あとは船の上で体力を回復しながら徳島港へ。そのまま東海岸を南下して室戸岬を目指せる。高速を使わずにこれだけ効率よく四国入りできる手段は、他にありませんでした。
大型バイクなら淡路島経由という選択肢もありますが、南海フェリーには「移動しながら休める」という独自の価値があった。疲れずに徳島に着ける。それだけで四国ツーリングの質が変わります。
どんな船が運航していたか

フェリーかつらぎとフェリーあい、2隻の違い
南海フェリーが運航していたのは2隻です。
「フェリーかつらぎ」は1999年就航。2026年時点で26年選手でした。僕が2022年に乗ったのはこの船です。古い船だとは思いませんでしたが、今思えばその老朽化こそが今回の廃止の直接的なトリガーになっています。
「フェリーあい」は2019年就航の比較的新しい船で、船内設備が刷新されていました。グリーン席(リクライニングシート)やWi-Fiも完備されています。南海フェリーが生き残りをかけて2019年に新造船を投入した——にもかかわらず、それでも間に合わなかった。この皮肉については後で触れます。
バイクで乗る場合の手順と注意点

バイクで乗る場合の流れを簡単に説明しておきます。
和歌山港では、まず窓口でチケットを購入します。その後、フェリー乗船口に並んで待機。係員の誘導に従って乗船し、車両甲板の左前方にバイクを横並びで駐車します。タイヤに輪止めを置いてもらい、ハンドル等からロープで床に固定してもらえるので、転倒防止の準備は特に必要ありません。
徳島港側はドライブスルー方式で、バイクに乗ったまま乗船券が購入できます。
バイク乗りが必ず知っておくべき重要な点が一つあります。
バイクは予約できません。
車はWEB予約や電話予約ができますが、二輪は先着順のみ。公式FAQにもはっきり「予約制ではなく先着順」と明記されています。1便あたりの積載台数は目安として20台前後。GWやお盆の繁忙期は早めに並ばないと乗り損ねることもあります。
出航30分前までに窓口でチケットを購入する必要があるので、余裕を持って港に到着しておくことをおすすめします。
なぜ南海フェリーは廃止になるのか

廃止の理由は一言では言えません。20年以上にわたって積み上がってきた構造的な問題が、最終的に限界を超えた…そういう話です。
1998年・明石海峡大橋という最初のターニングポイント
最初の転換点は1998年です。
明石海峡大橋が開通し、神戸淡路鳴門自動車道が全通しました。本州と四国が高速道路で直結されたことで、関西から四国への移動の主役が一気に陸路へ移り始めます。
それまでフェリーは「四国へ渡る手段」として確固たる地位を持っていました。でも高速道路ができてしまえば、車で直接走った方が早い。トラックも同じです。物流が陸路に流れ始めた。この時点でフェリーの立場は大きく揺らぎました。
利用者数の推移(ピーク97万人→35万人)

数字で見ると状況の厳しさがよくわかります。
1995年度の旅客数はピーク時で97万人。車・貨物の台数は29万台以上ありました。
2024年度は旅客数35万7,000人、車・貨物は11万5,000台。約30年でほぼ3分の1以下まで落ちています。
じわじわと、しかし確実に、航路の存在感が薄れていきました。
コロナ禍と債務超過

そこにコロナが来ます。
2019年度の旅客数は41万4,000人でした。翌2020年度は19万5,000人。一年で半分以下に落ちました。営業損失はその年だけで5億3,200万円。翌2021年度も4億6,200万円の赤字で、この年から債務超過の状態が続くことになります。
コロナ後、利用者は少し戻りました。2024年度は35万7,000人まで回復しています。しかし黒字には戻れなかった。燃料費が高騰してコストが下がらなかったからです。2024年度の営業損失は900万円。数字だけ見れば小さく見えますが、債務超過の状態でこれが続いている。じわじわと体力が削られていく状況です。
船の老朽化と更新費用という最後の壁

そして最後のトリガーが、船の老朽化でした。
「フェリーかつらぎ」は1999年就航。2026年時点で26年選手です。船体を更新しなければならない時期を迎えていましたが、新造船の建造には報道によると約40億円とも言われています。債務超過が続く会社にこの費用は出せない。
では「フェリーあい」1隻だけで続けられないか——南海フェリーはこれも検討しました。しかし1隻では無理という結論になっています。
なぜかというと、フェリーは定期的にドック入り、つまり整備のために運航を止める期間が必要です。2隻あれば交互に整備できますが、1隻しかなければその間は完全に運航ストップ。便数が半減すれば収益も成り立たない。
新造船を投入したのに間に合わなかった皮肉

2019年に新造船「フェリーあい」を投入して、それでもなお廃止になる。
この事実が、この航路が置かれていた状況の厳しさを一番よく表していると思います。南海フェリーは手を打てるタイミングで手を打っていた。それでも構造的な問題には勝てなかった。
廃止はいつ?今乗れるのか

2028年3月末が目安、ただし前倒しの可能性あり
正式な廃止時期は2028年3月末が目安とされています。
ただし重要な注意点があります。公式発表にはこう書いてあります。
「船舶・設備等の老朽化や従業員の確保など安全運航に支障が生じる恐れのある場合には、撤退時期を早める場合があります」
つまり2028年3月まで確実に乗れる保証はない。老朽化が進んだり、乗務員の確保が難しくなったりすれば、前倒しで終わる可能性があります。
2026年4月現在、公式サイトには「通常運航しています」と表示されています。今この瞬間は動いている。でもいつ状況が変わるかはわからない。乗りたいなら早めに計画を立てることをおすすめします。
現在の運賃と料金の確認方法
通常期(2025年10月〜2026年6月30日)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 旅客運賃(大人) | 2,500円 |
| 二輪車運賃(125cc以下) | 2,200円 |
| 燃油調整金 | 1,000円 |
| 合計 | 5,700円 |
繁忙期(2026年4月29日〜5月7日)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 旅客運賃(大人) | 2,500円 |
| 二輪車運賃(125cc以下) | 2,700円 |
| 燃油調整金 | 1,000円 |
| 合計 | 6,200円 |
スーパーカブ110(125cc以下)で乗る場合の片道料金は、旅客運賃2,500円+二輪車運賃2,200円+燃油調整金1,000円で合計5,700円です(2025年10月〜2026年6月通常期)。
GWなどの繁忙期は二輪車運賃が上がり、合計6,200円になります。
なお、バイクはWEB予約割引の対象外のため値引きはありません。
燃油調整金は四半期ごとに見直されます。
最新の料金は南海フェリー公式サイトで確認してください。
廃止後、バイク乗りへの影響と備え

後継事業者は現時点で未定
南海フェリーが廃止された後、この航路がどうなるかはまだ決まっていません。
和歌山県知事は「航路存続も視野に入れながら、国や徳島県と連携して対応していく」とコメントしています。行政側が動いていることは確かですが、具体的な後継事業者の発表はまだありません。
南海電鉄の和歌山港線については、南海の広報担当者が「現時点で廃止予定はない」と答えています。ただし長期的にどうなるかは今後の状況次第です。
原付二種に代替手段はあるか

バイク乗りへの影響という意味では、特に原付二種乗りにとって代替手段がないという問題が残ります。
高速に乗れないカブやモンキーで大阪から徳島方面を目指すとなると、このフェリーがなくなった後は現実的なルートが大幅に限られます。しまなみ海道経由は距離がありすぎる。高速に乗れる排気量のバイクなら淡路島経由という選択肢がありますが、走行距離が増え、旅の性質そのものが変わります。
走行距離が増えるなら保険を見直しておきたい

フェリーがなくなって長距離ツーリングが増えるなら、バイク保険を一度見直しておくことをおすすめします。
走行距離やルートが変われば、リスクの質も変わります。今の保険が自分の乗り方に合っているかどうか、確認しておくタイミングです。
ただし保険の見直しにはデメリットもあります。等級が途中でリセットされるケースや、補償内容を変えることで月々の保険料が上がる場合があります。見直す際は現在の等級と補償内容を必ず確認したうえで、複数社を比較してから判断してください。
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長距離ツーリング前にJAFという選択肢
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もう一つ、長距離ツーリングで頼りになるのがロードサービスです。
フェリーがなくなって四国まで自走する距離が増えれば、途中でのトラブルリスクも上がります。JAFに入っておくと、バイクでも全国どこでもロードサービスが呼べます。年会費4,000円程度で、四国まで走るなら入っておいて損はありません。
まとめ・乗るなら早めに

2022年の秋、「フェリーかつらぎ」の甲板に立っていた時、まさかこの船がなくなる話をすることになるとは思っていませんでした。
1975年に設立されて、50年以上にわたって関西と四国をつないできた航路です。明石海峡大橋ができて、コロナが来て、燃料費が上がって、船が老いて、それでも動き続けてきた。
廃止が決まった今も、船は動いています。
乗ったことがある方なら、あの甲板から見た海の景色や、船内でぼーっとしていた時間を思い出すものがあるんじゃないかと思います。乗ったことがない方には、まだ間に合います。
ただし「2028年3月まで余裕がある」とは思わない方がいい。前倒しの可能性がある以上、行くなら早めに。
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